界面活性剤の種類によって、タンパク質変性作用の強さ、刺激の強さに差があると言われています。しかし、あくまで他の種類との比較の話であって、タンパク質変性作用が弱いと言われている非イオン系界面活性剤は、「膜タンパク可溶化剤」(たんぱく変性剤)として使用されています。皮膚への影響を考えると、なるべく接触を避けることが望ましいと言えます。
界面活性剤について一般的にいわれていることを冷静に考えると・・・
界面活性剤はお肌につけてはいけない物質ですね。
界面活性剤は表面張力を弱める作用を持つ物質である。界面(表面)とは、2つの性質の異なる物質の境界面のことであり、2つの混じり合わない物質の間には、必ず界面が存在する。界面活性剤とは、このような界面に働いて、界面の性質を変える物質のことを言う。通常、親水基(水になじみやすい部分)と疎水基(もしくは親油基・水になじみにくい部分)を併せ持つ。

界面活性剤を少しずつ水に溶かしていく場合、界面活性剤の親水基は水の中に入ろうとし、一方で疎水基は水から逃れようと(=水との接触を避けようと)するので、界面活性剤の分子は主に空気と接する水の表面に吸着し、配列していく。しかし、界面活性剤の濃度を徐々に濃くしていくと、疎水基は逃げ場がなくなり、徐々に寄り集まって水との接触を避けるようになる。
そして、ついには、親水基を外側に向け、疎水基を内側に向けた形の集合体を形成し始める。この集合体をミセルといい、疎水基が水との接触を回避しようとするには、界面活性剤の分子が数十個から100数十個集まった集合体になる必要がある。また、ミセルが出来始めるときの界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度(critical micelle concentration 略してc.m.c)という。
ミセルは、中心部が疎水性、つまり油となじみやすい性質のため、水に溶けにくい油性の物質を、ミセルの内部に取り込むことが出来る。この現象を可溶化と呼ぶ。可溶化は、洗浄に寄与する界面活性剤の働きの一つである。

乳化と分散
通常、水と油を混ぜて振ると、一時的に混ざるがすぐに分離してしまう。ところが、そこに界面活性剤を入れて振ると、白く濁ったようになって分離することなく混ざる。この現象を乳化という。
水と油の間の界面には、表面張力が働いており、混ざっているときには、水の中にたくさんの油滴が出来ているので、界面の面積が広くなっている。表面張力が強いと、界面の面積は出来るだけ小さくなろうとするので、水は水同士、油は油同士でまとまって、界面の面積を最小にする。
ところが、界面活性剤が溶けていると、表面張力が小さくなるので、たくさんの油滴ができて界面の面積が広いままでも、安定していられるようになる。乳化しているとき、油滴と水の間の界面には、疎水基を内側(油側)に、親水基を外側(水側)に向けて、界面活性剤の分子が吸着している。可溶化と似ているが、油滴はミセルよりもはるかに大きく、目に見える規模の粒なので、油が可溶化している液は透明に見え、油が乳化している液は白く濁って見えるという違いがある。
例えば、マヨネーズにおいては、卵黄の脂質(リン脂質やステロール類等)が界面活性効果を表し、牛乳においては乳タンパク質が働くことで安定した乳化を形成している。
また、乳化と似た現象で、分散という現象がある。すすなどの固体の粒子を水に入れて振ると、油のときと同じように、粒子同士が集まって水と分かれようとするが、界面活性剤を入れて振ると、粒子の周りに界面活性剤の分子が吸着して、水の中に散らばって安定する。
皮膚の洗浄における界面活性剤の働き
界面活性剤は汚れの表面に吸着して、汚れと水との間の表面張力を小さくするため、汚れが皮膚からはがれて水の中に浮き上がろうとする。そして、タオルなどの摩擦による力も手伝って、汚れが水中に浮き上がると、乳化、分散、可溶化という働きによって水の中に安定に浮かび、汚れの表面と皮膚の表面はどちらも界面活性剤の分子に覆われるので、汚れが再付着しにくくなる。
洗浄における界面活性剤の働きが十分に発揮されるためには、ミセルが必要となる。それ以上吸着できる界面がなくなって、界面活性剤同士で集まり始める濃度、つまり臨界ミセル濃度以上なら、ミセルを作っている分子が、汚れが浮き上がって出来た新しい界面に吸着することが可能となる。よって、効果的な洗浄のためには、臨界ミセル濃度以上の濃度が必要であるといえる。
界面活性剤の弊害
界面活性剤には「タンパク質変性作用」と呼ばれる性質があり、身体のタンパク質を破壊する働きを持っている。慢性的な肌荒れを起こしている人は、ボディシャンプーや台所用の洗剤、または化粧品等によって皮膚のタンパク質を一部破壊されている場合が多い。タンパク質変性作用による皮膚への影響としては、アトピー性皮膚炎・手荒れ・湿疹・かぶれ等の一次刺激性接触皮膚炎が挙げられる。
また、界面活性剤には浸透力があるため、シャンプーや歯磨き粉を使うと、頭皮、頭髪、舌の細胞などが傷つけられたり、肝臓障害などの原因になると指摘されているが、それらの主な論拠はこの「タンパク質変性作用」と「皮膚からの強力な浸透力」という2つの性質にある。
タンパク質変性作用のメカニズム
このタンパク質変性作用には、界面活性剤の親水基の種類が影響しているといわれている。例えば、ケラチンタンパクの変性実験ではAS(高級アルコール硫酸エステル塩。歯磨き粉の発泡剤としてよく使用されている)、LAS(直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩。洗濯用洗剤や住居用洗剤に配合されている)などが変性作用が大きく、石鹸がそれに続き、非イオン界面活性剤は変性作用が少ないとされている。
一言で界面活性剤といっても、洗濯用洗剤・住居洗剤等の洗浄力を重視するものや、台所用洗剤等の洗浄力と皮膚への影響のバランスを重視するもの、シャンプー・洗顔料等の皮膚への影響を重視するもの、乳液・クリーム等の洗い流さない化粧品で、皮膚への影響を最も重視するものまで、その用途は非常に広くなっている。
界面活性剤とイオン
界面活性剤は、水に溶かしたときに電離してイオン(電荷をもつ原子又は原子団)となるイオン性界面活性剤と、イオンにならない非イオン(ノニオン)界面活性剤に大きく分類される。イオン性界面活性剤はさらに、陰イオン(アニオン)界面活性剤、陽イオン(カチオン)界面活性剤および両性界面活性剤に分類される。また、イオン性による分類に加えて、親水基や疎水基の種類や原料によってさらに細かく分類される。
陰イオン系(アニオン系)界面活性剤
水に溶けたときに、親水基の部分が陰イオンに電離する界面活性剤。洗浄力が高いため、石けんをはじめ、合成洗剤に多く利用され、その利用量は全界面活性剤の約半分を占めていると言われている。陰イオン系界面活性剤は、親水基としてカルボン酸、スルホン酸、あるいはリン酸構造を持つものが多い。カルボン酸系としては石けんの主成分である脂肪酸塩やコール酸塩が、スルホン酸系としては合成洗剤に多く使われる直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやポリアクリルアミドゲル電気泳動にも利用されるラウリル硫酸ナトリウム等がある。
脂肪酸系(陰イオン) ・・・純石けん分(脂肪酸ナトリウム)、
純石けん分(脂肪酸カリウム)、
アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム
直鎖アルキルベンゼン系 ・・・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム (LAS)
高級アルコール系(陰イオン)・・・アルキル硫酸エステルナトリウム、
アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム
アルファオレフィン系 ・・・アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム
ノルマルパラフィン系 ・・・アルキルスルホン酸ナトリウム
陽イオン系(カチオン系)界面活性剤
水に溶けた時、親水基の部分が陽イオンに電離する性質を持つ。親水基としてテトラアルキルアンモニウムを持つものが多い。石けんと逆のイオンになっているため、「逆性石けん」と呼ばれることもある。一般に、マイナスに帯電している固体表面に強く吸着し、柔軟性、帯電防止性に優れ、柔軟仕上げ剤やリンスとして利用されている。また、細菌の表面はマイナスに帯電している事が多いため、殺菌剤としても使われている。
第四級アンモニウム塩系 ・・・アルキルトリメチルアンモニウム塩、
ジアルキルジメチルアンモニウム塩
両性界面活性剤
分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方を併せ持っているため、水に溶けた時、アルカリ性領域では陰イオン界面活性剤の性質を示し、酸性領域では陽イオン界面活性剤の性質を示す。洗浄力が強く、殺菌作用、毛髪柔軟効果がある。刺激性がほとんど無いため、シャンプーやリンス、柔軟剤等に用いられる。
アミノ酸系 ・・・ アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム
ベタイン系 ・・・ アルキルベタイン
アミンオキシド系 ・・・ アルキルアミンオキシド
非イオン系(ノニオン系)界面活性剤
水に溶けた時、イオン化しない親水基を持っている界面活性剤で、水の硬度や電解質の影響を受けにくく、他の全ての界面活性剤と併用できる。酸性でもアルカリ性でも使用でき、化学的に安定している。また、乳化作用、分散作用、浸透作用に優れているため、化粧品や食品の乳化剤としても多く使用される。食品衛生法で食品に使うことのできる界面活性剤は、レシチン(両性界面活性剤)を除き、全て非イオン性界面活性剤である。また、衣類用洗剤も非イオン系界面活性剤を使用したものが増えて来ている。
脂肪酸系(非イオン) ・・・しょ糖脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
脂肪酸アルカノールアミド
高級アルコール系(非イオン)・・・ポリオキシエチレンアルキルエーテル
アルキルフェノール系 ・・・ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル
非イオン系界面活性剤は、タンパク質変性作用が弱いと言われているが、「膜タンパク可溶化剤」、たんぱく変性剤として使用されている。あくまで比較の話である。
石鹸も合成界面活性剤である
界面活性剤のうち、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムを「石鹸」と呼び、それ以外は一般的に「合成界面活性剤」と呼ばれている。また、純石鹸成分が97 %以上の石鹸を「純石鹸」と呼ぶ。
石鹸の製法は油脂鹸化法と脂肪酸中和法の2種類がある。油脂鹸化法は牛脂、椰子油、オリーブ油などの天然油脂と水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて鹸化して、多量の食塩を加えて塩析させて分離する。NaOHは海水や食塩水の電気分解でも精製可能である。脂肪酸中和法は脂肪酸をアルカリで中和させてつくるので、残留塩基がなくなり皮膚や粘膜に対して刺激が少ない石鹸が得られる。ナトリウム石鹸に比べ、カリウム石鹸は溶解性が高く液体石鹸を作ることができる。しかし、カリウム石鹸は溶けやすいため、浴用石鹸としてはナトリウム石鹸が適する。
環境教育や表示指定成分(添加物)が人体や環境に与える悪影響を伝える情報が広まり、オリーブオイルなどの原料によって、石鹸を手作りする人々が増加している。目的は、環境保全の一環であったり、アレルギーの回避やスキンケアなどである。ただ、原料に使われる水酸化ナトリウムは劇物であり、安全な防護策を施した上で製造することを推奨する意見もある。また、処方通り作らないと原料が残留し、肌に悪影響を及ぼしたり、残留した油脂による汚染も懸念される。
排水後、石鹸カスとなり界面活性力を失う事や生分解性が良好であるため環境にやさしいと言われているが、水の硬度により使用量が多くなることや有機物を多く含むため、BOD(有機物を微生物が分解するときに消費する酸素の量のこと。また有機物の量を推測する値のことで、生物化学的酸素要求量の略語)などの点から議論の分かれるところである。
また、「弱酸性だからお肌にやさしい」と謳っているCMもあるが、弱酸性と中性の洗浄料とを比較して、その液性が弱酸性か中性かという点での影響がどれほどなのかは、明らかになっていない。しかし、これらの弱酸性・中性の洗浄料と、アルカリ性の洗浄料を比較した場合には、そのアルカリによる皮膚への影響は無視できないレベルとなる。一般の衣料用洗剤の多くは弱アルカリ性で、また、皮膚洗浄用の洗剤類では、石鹸などの一部の製品が弱アルカリ性である。
アルカリ性の洗剤の特性としては、洗浄力の高さが挙げられるが、これはそのまま皮膚に接触した際の皮膚へのダメージの大きさに直結する。皮膚の構成成分はタンパク質であるが、このタンパク質はアルカリに弱く、アルカリの水溶液は、固体タンパク質に浸透して、それを膨潤させ、最終的には水に溶解させてしまう。このため、皮脂膜は用意に脱落し、皮膚に直接アルカリが作用する。
このことから、「石鹸=安全・肌にやさしい、合成洗剤=危険・肌に悪い」という図式が必ずしも当てはまらないということが分かる。弱酸性か中性で皮膚への刺激性が少ない成分を主体にした洗浄料と、アルカリ性ではあるが、各種添加物の少ない石鹸のどちらを選択するかは、個人個人のレベルで冷静に対処することが望ましい。
